惣一郎の影

前話から1ヶ月ほど経っているが、響子が未亡人であったことのショックから立ち直ることができずにいる五代。友人の坂本たちにも相談するが、「結婚はムリ」と軽くあしらわれてしまう。

帰宅後ちょうどアルバイトを探していた五代に、郁子の家庭教師の依頼が音無さんから響子を通じて入る。五代は音無さんから自分が信頼されていると思い込み二つ返事で快諾するが、五代の学力を考えると不安になる響子。

家庭教師初日の出発前、響子は音無家に失礼のないようにと、五代の襟を正すなどするが、その姿を目撃した朱美と一の瀬にひやかされる。一方音無家では、あまり真面目に勉強する気のない郁子にそそのかされ、ついついアルバムなどを一緒に見てしまう五代だが、新婚の頃の響子の今とは違う安心しきった笑顔に少しショックを受けてしまう。


考察など

「管理人さんの後ろに死んだ亭主が見える」と五代は早速「無敵な死人」にやられている模様。響子と一の瀬の会話に「再婚」という話が出ており、一刻館の住人はこの時点でおそらく全員が響子が未亡人であることを知っていると思われる。

家庭教師の依頼は郁子たっての希望。この「年上への憧れ」という図式は、賢太郎から郁子、郁子から五代、五代から響子、響子から惣一郎にいたるまであてはまる。(郁子から五代へは恋愛感情はないが。)

郁子から見せてもらったアルバムには、惣一郎が写っていた写真が一枚だけあったが、郁子のイタズラによって顔のところだけが破れてしまっている。郁子が意図的に破ったなどの、郁子と惣一郎の人間関係を示唆する描写とも見えてしまうが、全くそういった意図はない。これは本作が、「惣一郎の顔を一度も見せない」という手法で描かれているためである。(五代も惣一郎の顔を実際に見るのはまだずっと先である。)


日時

昭和56年(五代が20歳の年) 5月中旬


初登場

坂本の彼女(?)、郁子の母